恐れるべきは、恐れる心それ自体であるということ
フランクリン・ルーズベルトの米大統領就任演説に、有名な一節がある。
...the only thing we have to fear is fear itself...
日本語に訳すと、「恐れるべきは恐怖それ自体」という意味だ。
人生において、乗り越えなければならない壁に直面し、あるいは綱渡りを余儀なくされる場面がある。
そうした試練に対して、ベストな準備をして、ベストな状態で臨めるならば言うことはない。しかし、人間は弱さを抱えた生き物であるから、重大な試練であればあるほど、プレッシャーに圧迫され、ベストなパフォーマンスを発揮できないことも多い。
また、「人事を尽くして天命を待つ」という言葉がある。しかし、失敗すれば人生の再設計を余儀なくされるような試練においては、いかに人事を尽くしたところで、穏やかな気持ちで天命を待つことはできないのが現実だろう。
もし、この試練を乗り越えられなければ、人生はどうなってしまうのか。
そうした将来への不安に憑りつかれ、日々の生活が、心ここにあらずといった状態になることもある。
結果への不安で勉強や仕事に手がつかず、来る日も来る日も、本来ならば有意義に使えるはずの時間を、何事も為さずに過ごしてしまうかもしれない。
しかし、人生において最も大切なのは、限られた人生の時間を、満足の行くように過ごすことだ。
人生において直面する試練は、結局のところ、そのための手段であり経過地点に過ぎない。
よって、試練の結果に気を揉み、そのために日々の活動が疎かになるようでは、本末転倒だろう。いかなる精神状態だろうと、自分がやりたいこと・やるべきことを優先して行っていくべきである。
不安や恐れは、人間が危険を察知し回避するためのアラームであり、必要なものだ。
しかし、まるで幽霊のように、不安や恐れが心に憑りついて離れなくなると、人は自分の人生を強く生きていくことができなくなる。
恐れるべきは、恐れる心それ自体であり、不安や恐れを克服するための勇気を持たねばならない。